2023年9月26日火曜日

授乳

 帰省してローカルニュースを楽しんでいる。

先日は宍道湖畔の道の駅に授乳用のブースが設けられた事が話題になっていた。人目を避けて安心して授乳できるよう、段ボールを組み立てた公衆電話ボックス程度の大きさの囲いが二つ設置されていた。それに対し「良くなった」と素直に喜ぶ人、「天井がない」「入口がカーテン一枚なのは不安だ」などと更なる改善を求めて不満を漏らす人、様々だった。

思い起こせば、この湖北線沿いの道の駅は、八年前娘がやって来た時に生後六か月の息子に授乳した場所だった。当時は当然そんな立派なブースなどなく、一般の客が往来するロビーで首から下をマントのような黒い布で覆って胸元を隠して乳を吸わせていたのを思い出す。乳を飲む側からすれば、そんな暗がりで飲むより白日の下で堂々と飲んだ方が余程気持ち良かったに違いない。

そもそも昔の女性は授乳の際に乳房をさらけ出す事に左程ためらいを感じていなかったように思う。50年前なら駅の待合室や電車の中で堂々と幼児に乳を飲ませる女性はザラにいた。日本だけでなく海外でも似た経験があって、30余年前、スタンフォード大学の夏季講習を受けているとき、隣に座っていたフランスから来た女性が授乳を始めたのには驚いた。ロの字に座って何らかのディカッションをしていたと記憶するが、相対する正面に席を取れば良かったと後悔した事を思い出す。

性に関する規範は文明の度合いが進むほど厳格化するものなのだろうか。中国の田舎に行くと、今でも用を足すのがあけっぴろげで、安心して排便も出来ない事がある。文明の進化と性規範の厳格化には正の相関がありそうに思えるが、しかし女性の水着はどんどん大胆かつ奔放なものになっている。これはどう説明すればよいのか考え込んでしまう。

2023年9月23日土曜日

塩カマ神社

 ナビの目的地に「シオガマジンジャ」で検索すると全国各地にその名が見えるが、島根県では出てこない。でもちゃんとありますよ。車で通りかかると見逃がしてしまいそうな小さな看板があった。


近くに路駐して横の細い道を登っていくと大きな岩が複雑に絡んでいるのが見える。




こんな場所にどうしてこんな大きな岩があるのだろう。大山の噴火で飛んで来たのか。古代の人がその不思議に神を感じたのは想像に難くない。


岩と岩の小さな隙間をくぐっていくと小さな社が鎮座していた。




地元の人は「シオガマさん」と言って崇めているとの事。

2023年9月19日火曜日

原子の数

 よっこらしょと一息ついて大きく深呼吸した1リットルの空気の中に、あの憎っくきプーチン大統領の吐いた息の分子が1万個も含まれているとしたらどうだろうか。プーチンの息という汚染物質を1万ベクレルも含む空気を吸うなんて、安心して息もできないと思われるに違いない。残念ながらこれは事実で、この例は原子・分子の数の多さを実感するための例として良く引き合いに出される。物理学を志す学生にはアインシュタインの息が、また場合によってはマリリン・モンローの吐いた息が例として使われたりする。

ChatGPTに聞いてみたが、一回の深呼吸で吸う量は1リットル、人間が一日で呼吸する空気の量が12万リットル、地球全体の大気が4,200億立法㎞である由。それを元に、22.4リットルの空気の中に分子が6×1023乗個含まれている事を加味して計算すると、プーチン大統領がウクライナ侵攻を始めた去年の224日に吐いた息が、一年以上の期間で地球全体に拡散し、均質に混じりあったとして、右記の結果が得られる。それもたった一日の息で1万個だ。

放射性物質の量を表すベクレルという単位はまさにそんなレベルの話なのだ。ちなみに話題の処理水についてはトリチウムが12年半で半減する速度で放射性物質を出し、それが1秒間に10個測定されたという事は元のトリチウムは1リットルの中に10億個程度存在しているという事になる。

かほどに多い原子の数だが、93日付の読売新聞の編集手帳には「将棋の指し手は10200乗通りあり、宇宙の原子の数より多い」とあった。将棋ファンの一人としてその奥深さを喧伝して貰えるのは有難いけれど、にわかには信じ難い話。その検証はまた日を改めて行う事にしよう。

2023年9月15日金曜日

明通寺

 福井観光の最後は小浜の明通寺。本堂と三重の塔が国宝で、国宝の建築物は福井県内ではここだけだとか。拝観料500円を払って本堂の中でこの寺の由緒を聞く。本尊の薬師如来を正面にたった一人座り、堂内によく響く和尚さんの説明に聞き入った。






養浩館庭園

 福井市内にある養浩館庭園、福井藩主の別邸だったところらしいが、見ごたえ十分。建物の中に入る事が出来るのもありがたい。朝早い時間だったので、他に観光客も居らず、独り占め出来た事が一層好印象として残った。







2023年9月14日木曜日

平泉寺

 越前大野城のすぐ近くに(と言っても隣の市になるが)平泉寺白山神社というのがあった。義景はここの僧兵も味方につけたかったが残念ながら僧兵は信長に味方したとか。そして時代が下り、一向宗の門徒によって寺が焼かれたらしい。加賀の一向宗と言えば戦国大名のような勢力を持っていたというからさもありなんか。境内は静かで苔が美しい。何故か楠正成の墓があった。湊川の戦いで死んだはずの大楠公、どうしてこんなところに墓があるのだろう?朝倉氏は播磨の守護だった斯波氏に従って兵庫県から福井に引っ越して来たらしいからそんなことも関係しているのだろうか。





一乗谷朝倉遺跡

 一乗谷の朝倉氏の屋敷跡は庭園の石積みくらいしか残っていない。不思議に思ったのは義景の墓が一番目立っていたこと。朝倉氏は義景で絶えたはず。墓を作る子孫もいなかったはずで、どうしてその義景の墓が残っているのか?義景以前の当主の墓なら分かるが・・


また遺跡の一部に読めない字があった。これ、読める人いますか?フリガナをつけておいて欲しかったなあ。


一乗谷朝倉館跡

 福井と言えばまず一乗谷を思い出す。かつて朝倉氏が第二の京都を目指して街づくりを行った。昭和40年に農地改革で地面を掘り返したら遺跡が見つかり、今のように整備したとか。町人が住んでいた街区が少し復元されているが、その屋根の苔がすごかった。この家は平成7年に作ったものだとか。まだ30年も経っていない事になる。出雲大社は60年毎に屋根の葺き替えをしているが、前回の葺き替えの前、つまり60年経過した屋根はこんなに苔が生えていなかった。苔にも好みがあって、成長が早い場所と遅い場所があるのだろうか


越前大野城

 一乗谷朝倉館跡でガイドさんに聞いたのだが、朝倉義景は信長に敗れ、一乗谷城から越前大野城に逃れ、そこで一族の助けを借りて再起を図ったのだが、一族に裏切られ、そこで自刃したとか。越前大野城は今はコンクリートの城だが、解説によると元々の城は信長の家臣の金森長近が作ったものらしい。とすると朝倉義景の時には城といっても躑躅が館のような建物があっただけなのだろう。石垣は野面積みの古めかしいものだった。




北の庄城

 福井と言えば柴田勝家の北の庄城を思い起こすが、この跡地は今は柴田神社として残っているらしい。かつての石垣の跡とかがわずかに残っているがさみしい限り。うううん。お市の方もここで亡くなったのだなあ。




福井城

かつては越前松平藩の城として威容を誇っていたのだろうが、福井城はもう跡かたもなく、公園として公開されている。かつての本丸跡には県庁が立っていて、天守閣のあとは石垣が残るのみ。(登る階段が急だった)公園内に岡倉天心の銅像が立っていて、かれが福井出身である事を知ったのだが、岡倉天心よりずーーーっと立派な銅像はかつての福井市長をやった人のものだった。まあ、そんなものなのだろうね。








 

丸岡城

埼玉から出雲に帰りました。今回は色々荷物を運ぶ関係上、車での帰省。東海道や中央道を通るのはもう飽きたので今回はちょっと嗜好を加えて、埼玉から直接西に向かい、圏央道、関越、上越を経由して上田の手前で下の道に降り、松本から飛騨高山を抜けて、福井に泊まりました。そして以後日本海沿いに一路出雲へ。

距離も短いし、高速料金も格段に少ない。
ちょっと疲れるけど、途中適宜休憩場所を入れれば、このルートはおすすめかも。
まずは福井での城巡りの写真から
最初はなんといっても丸岡城。国宝指定を目指してるというだけあって、古い形態がそのまま残ってる。その代表が石の瓦。





2023年9月13日水曜日

風穴の里

松本を過ぎて飛騨高山に向かう途中、「風穴の里」という道の駅があったのでトイレ休憩に入った。風穴そのものは出雲の須佐にある方がずっと見ごたえがあるのだが、そこへ行く途中の太鼓橋などは結構見栄えがする。そして途中栗の実が沢山落ちていた。煮て食べる事が出来るのだろうか?普通の栗と違ってイガイガがないのが気になる。どなたか栗に詳しい方がいらしたら、これが食べられるものなのかどうか教えていただけたら嬉しいです。
また福井市内の養浩館庭園にも栗かどんぐりか知らないが沢山実が落ちていた。こちらはどうだろう?
後日分かった事だが、これは栗ではなく栃の実だという事。食べるにはあく抜きが大変で、相当の手間をかけないといけないようだ。










2023年9月12日火曜日

10ベクレル

 東電の福島第一原発からの処理水の海洋放出に関し、その観測値の少なさに疑問を感じ、ChatGPTに「東電福島原発の処理水放出で海水のトリチウム濃度が10ベクレル以下というのは本当ですか」と質問してみた。するとパソコンの画面がフリーズしたように止まり、しばらくして「申し訳ありませんが、私の知識は2021年9月までのものであり、それ以降の出来事についての情報は提供できません。したがって、当処理水に関する最新の情報については、公式な情報源や信頼性のある報道機関から最新情報をご確認いただくことをお勧めします。」との答えが返ってきた。

分からない事を知ったかぶりをするのではなく、正直に分からないと答えるなんて可愛い奴だと思いながら、では「ベクレルとは何か」とか、「トリチウムとは何か」とか個別に聞くとちゃんと答えてくれる。そういう個別の知識を総合して論理的な推理を加えて判断すれば何らかの評価が出来る筈なのにそれを怠り、とにかくネット上で観測値についてのコメントを探して見つからないので分からないと答えているだけなのだと思った。

原子・分子の数を表すはずのベクレル、本来なら10の何乗かが話題になってしかるべきなのに、それがたったの10とは!その余りの少なさに驚いたのだが、あくまでそれは1秒当たりに発生する放射の数を言っているのであり、元の物質の量や濃度を論じるにはその半減期が関係しているらしい。半減期が長い物質ならベクレルが小さくても濃度は高いし、逆なら濃度は引くい。また人体への影響は濃度だけでなく放射線のエネルギーも関係していて、10ベクレルだからどうのこうのとは言えないのだが、それにしても1リットルの中の10個という数値がどんなものか次回検証したい。

2023年9月5日火曜日

公僕

 週刊新潮831日号の「外務省がおもてなし『国会議員』夏の”外遊バカンス”に便宜供与」という記事には冷静でいられなかった。

議員が公務で外国を訪れる際の外務省(および現地公館)によるアテンドに関するルールに関し、オフィシャルには「便宜供与の対象を一週間前までに依頼のあった公務に限る」としながらも、別途作成したガイドラインでは「公務の合間の私用で、常識的な範囲ならOK」として、それが濫用につながっているとの事。「常識的な範囲」の常識が一般庶民と大いに異なるから、エッフェル塔の前でポーズを取ったり、公用車を使っての観光や土産の買い漁りをしたりするのである。

本来の仕事をしっかりやっての上ならそれも愛嬌だと笑って済ませられるが、「中国拘束2279日」という本を読んだら黙っていられなくなった。副題に「スパイにされた親中派日本人の記録」とあるように、些細な事でスパイの容疑を掛けられた著者が、強制連行され有罪判決を受け収監された時の様子が書かれている。そこに描かれる日本大使館の対応はひどい。

領事部長と一等書記官が面会には来たものの、日本人が不当な逮捕で困っているのにそれを助けようとする積極的姿勢が全く見られない。著者の「何という無責任、〇〇氏(本には実名あり)のこの誠意のなさには本当に呆れるばかりだった」という言葉に無念さが溢れている。

北朝鮮による拉致もそうだが、日本の公務員は議員の物見遊山対応には熱心でも自国民の保護には関心がないようだ。確かに大使館員にしてみたら、外国政府と面倒な交渉をするよりは、日本から来た議員に阿っている方が楽だろうし、出世にも有利なのだろう。しかし公務員の第一義は国民福祉にあるはず。このまま公僕という言葉を死語にしてしまって良いものだろうか。